お仕事ノート
【徹底比較】「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」新旧対応表&改訂ポイント一覧
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はじめに
「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」において、公募要領や申請要件、審査基準などが大幅に改訂されました。
本記事では、「どの項目がどう変わったのか」を分かりやすくまとめるため、新旧対応表を用いながら主要な改訂点を解説します。
・記事の目的
1.改訂内容を 要件など実質的な変更、説明や意図の変更 に分けて紹介
2.誤解しやすいポイント(リース不可・代理申請不可・賃上げ必須化 など)を強調
3.申請者が今、何を準備すべきか を示す
注意: ここでまとめる内容は、公募要領・電子申請マニュアル等の原文を踏まえた要約・解説です。実際に申請される場合は、最新の公式資料を必ず併せてご確認ください。
特に影響が大きい改訂点(重要な変更TOP5)
1.リース・レンタルのみでは「50万円以上の設備投資」要件を満たせない
・変更点: 「借用に要する経費」は 50 万円以上の設備投資にカウントできない、と明記されました。
・影響: リース・レンタルだけの導入では要件不達。機械装置・システムを購入または製作し、50万円(税抜)以上投資することが必須に。
2.「オーダーメイド性」→「オーダーメイド設備」に変更し、“汎用設備単体”は対象外
・変更点: 文章表現を「オーダーメイド性」から「オーダーメイド設備」に変更し、従来あいまいだった“カスタマイズ”の要件を強調。
・影響: 単に汎用機器をそのまま導入するだけではダメ。事業者の業務に合わせたカスタマイズが必要なことが一層明確になりました。
3.賃上げ要件(1人当たり/給与支給総額)の記載が実質的に必須化
・変更点: 「会社全体の事業計画」に、賃上げ(給与支給総額、1人当たり給与支給総額)の具体的数値目標を必ず記載。
・影響: 省力化投資だけでなく、どの程度賃金を上げるかを明示しないと審査で不利に。目標を達成できない場合の返還リスクも明文化。
4.省力化の“会社全体”への波及効果が重要視される
・変更点: 省力化が部分最適で終わらず、浮いた時間・人員を高付加価値業務に回し、“付加価値向上→賃上げ”を目指す全社的取組を評価。
・影響: 単なる効率化だけではなく、経営全体の成長戦略が要求される。事業計画書に「どう活かすか」をしっかり書く必要あり。
5.代理申請が実質的に認められず、申請者本人申請が原則
・変更点: 「電子申請システムでは代理申請の委任関係を管理する機能は提供していない」との記載が新たに追加。
・影響: 行政書士・コンサル等による“代理”操作を、システム側が公式には想定していない。
新旧対応表(改訂の全体一覧)
下表は、代表的な改訂事項を「変更前(現行)/変更後(改訂後)」で比較したものです。
厳密にはもっと多くの文言・項番変更がありますが、申請に影響する主な要素を優先してまとめています。
項目 | 変更前(現行) | 変更後(改訂後) | 主な影響 |
リース・レンタル | 50万円以上の設備投資の要件に、リース等も含める解釈が可能とも受け取れた | 「借用に要する経費は含まない」と明記。リース・レンタル費では50万円要件を満たせない | 購入または製作による設備投資が必須。リース単独だと不適合 |
オーダーメイド設備 | 「オーダーメイド性」と抽象的に表現 | 「オーダーメイド設備」と具体的に表記し、汎用設備単体は対象外 | 企業独自のカスタマイズを明確化しないと審査NG |
賃上げ計画必須 | 賃上げ計画があいまいでも申請は可能 | 会社全体で給与支給総額・1人当たり給与の目標を必ず設定 未達の場合は返還リスクの計算式も詳細化 |
賃上げ未達=部分返還または全額返還リスク。現実的な数値設定を要 |
省力化効果の範囲 | 設備導入による“作業時間削減”が主評価 | 会社全体への波及効果を重要視。削減した工数をどう活用して付加価値や賃上げにつなげるか審査 | 単なる削減だけでなく、“成長につながる省力化”を計画書に盛り込む必要 |
代理申請の可否 | 代理申請に関する規定があいまい | 「電子申請システムで代理申請の委任関係を管理する機能は提供しない」と明文化 |
申請者本人が操作・内容を理解必須。 代理操作は不正申請リスク |
再生事業者の大幅賃上げ特例 | 大幅賃上げ特例の対象に含まれるか明確でなかった | 再生事業者は特例で補助上限額を上乗せできないと追記 | 再生事業者が大幅賃上げしても上限UPなし |
社会福祉法人の補助対象化 | 補助対象外だった | 社会福祉法人が従業員20人以下なら小規模とみなされ、補助率2/3適用 | 新たに申請可能になった法人が増加 |
最低賃金 +30円 / +50円の要件整理 | 行数・説明が少なく、達成時期があいまい | 事業計画期間の毎年○月末時点など、到達すべきタイミングをより明記 | 達成できなかった年度分ごとに返還発生 |
返還計算式の具体化 | 「未達成率に応じて返還」とざっくり記載 | 「達成率」に基づく計算式を明確化。年平均成長率0%以下なら全額返還 | “どこまで届かないとどれだけ返還か”が分かりやすい一方、ルールは厳格化 |
計画策定のタイミング | 交付申請時を基準に見積もるニュアンスが強かった | 応募申請時(最初の申請時点)の確定決算書を基に算出する方式に切り替え | “採択後に計画を固める”ではなく、最初から完成度の高い計画を出す必要 |
要件など実質的な変更 & 説明・意図の変更(詳細解説)
本節では、上記表をさらに(1)要件など実質的な変更と(2)説明や意図の変更の2カテゴリにまとめて、もう少し深く解説します。
細かな「表記ゆれ」「誤記修正」は除外し、申請者に影響が大きい箇所に絞っています。
(1) 要件など実質的な変更
・リースNG
「借用(リース・レンタル)に要する経費」は50万円投資要件にカウントされない。→ 必ず購入または製作が必要。
・再生事業者が大幅賃上げ特例の対象外
賃上げをしても補助上限額の追加は受けられない。
・社会福祉法人の追加
従業員20人以下なら小規模扱いとなり、補助率2/3適用。
・最低賃金+30円(基本要件)/ +50円(大幅賃上げ特例)の達成時期が毎年○月など具体的に整理
達成できないと年度ごとに返還が発生。
・賃上げ計画・労働生産性計画の必須化
会社全体での給与支給総額・1人当たり給与を、応募申請時の基準から○%UPする計画を示さないと審査通過が厳しい。
・達成率での返還
「未達成率→達成率」で計算を明確化し、0%やマイナス成長なら全額返還など厳しめに。
・電子申請システムで「代理申請」は不可
機能自体がなく、公募要領でも「申請者自身が理解・入力しないと不採択」と明記していると解釈される。
(2) 説明や意図の変更(明確化された項目)
・省力化指数・投資回収期間の定義がより分かりやすく
「設備導入による削減時間」と「増加時間」の区分を言い換え、「新規出店の場合の潜在削減時間も計算に含められる」と追記。
意図: 申請者が試算を正しくしやすくするため。
・オーダーメイド設備の考え方
「汎用設備単体は×だけど、汎用品同士を組み合わせて高い省力化を実現するならOK」と事例的に示唆。
意図: まったくのオーダーメイド製造だけが対象ではなく、“カスタマイズの有無”がカギということを伝えたかった。
・企業全体での生産性UP→賃上げにつなげる説明を強く要求
省力化効果をどう高付加価値業務へ転用するか、売上増・利益増をどう賃金UPに回すかを計画書で書く必要性を強調。
意図: 単なる業務コスト削減だけを目的にした投資は不可。従業員の待遇改善を伴ってこそ支援するというスタンス。
・応募申請時に計画を固める
交付申請時ではなく応募時点で計画を完成度高く出してほしい、という文言に。
意図: 採択後の手戻りを防ぎ、審査をスムーズにする狙い。
代理申請に関して:再度の強調
先の表・解説で触れた通り、今回の電子申請システムでは代理申請がほぼ認められていないというのが最終的な結論です。
・「委任状を出せばよい」などといった他の補助金制度で行われてきた方法が、現時点では本事業のシステム上あり得ないと解されます。
・申請者本人のIDでログインし、本人がすべて操作・内容確認していることを前提としており、不正や“丸投げ”を防ぐ仕組みです。
・行政書士やコンサルタントが計画書作成のサポートをすること自体は問題ないものの、実際の電子システム操作は申請者本人が行う必要があると考えてください。
まとめと今後の対応
1.リースだけでの設備導入はNG
補助を狙うなら最低でも50万円以上の「購入」投資を計画に組み込むこと。
2.賃上げ目標を必ず設定し、実現可能性を担保
返還リスクを避けるため、無理のない範囲で明確な数値と根拠を用意。
3.省力化の効果が“全社の生産性・従業員待遇向上”にどうつながるかを説明
何をどれだけ削減し、その人員・時間をどう付加価値創出に回すのか。
4.電子申請は代理禁止
申請者自身の操作・理解が前提なので、丸投げは不可。
5.再生事業者は大幅賃上げ特例の上限UP対象外
期待していた上限額の上乗せは見込めないため要注意。
6.詳細は最新の公募要領やマニュアルを必ず参照
本記事はあくまでまとめにすぎず、細部の規定が別途存在する場合も。
今後の対策: 早めに計画策定と社内外の体制準備を行い、応募申請時点で完成度の高い事業計画を出せるようにしましょう。特に「リース契約だけで済まそうと思っていた」「賃上げについてまったく書いていない」ケースは要再検討です。
本記事の注意点
・本記事は、公募要領・電子申請マニュアルなどをベースに要点をまとめた解説です。
・実際に申請する際は、最新の公式資料を必ず確認し、疑義点は事務局や専門家へ問い合わせを行ってください。
・特に返還要件や最低賃金要件は財務状況や天災等の例外規定もあるため、単純化できない部分があります。